◆◇◆━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━◆◇◆
》》企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン《《
第296号(2015.3.15)
商工会議所年金教育センター
◆━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━◆
〉〉〉CONTENTS〈〈〈
───────────────────────────────────
【連載記事】
1〉「今さら人には聞けない 年金財政・年金数理『超』入門」(全3回)」
第2回 財政方式が分かれば年金がわかる
───────────────────────────────────
【勉強会の開催情報】
2〉東京で開催する勉強会の参加者を募集しています。
「大きく変わる確定拠出年金の課題と今後の展望」(再掲)
───────────────────────────────────
【日本商工会議所からのお知らせ】
3〉商工会議所年金教育センターのホームページ閉鎖のご案内
——————————————————————
4〉DCプランナー資格登録者の住所変更等手続きについて
───────────────────────────────────
このメールマガジンは、企業年金総合プランナー(DCプランナー)認定試
験に合格し、1級または2級の資格を登録された方々に対する情報提供サービ
スの一環として、原則、毎月2回(1日および15日)送信しています。
◆◇───────────────────────────────◇◆
■━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…
1〉「今さら人には聞けない 年金財政・年金数理『超』入門」(全3回)」
第2回 財政方式が分かれば年金がわかる
───────────────────────────────────
2014年7月および2015年1月に開催され大好評を博した「今さら人には聞け
ない 年金財政・年金数理」勉強会。今回は、過去2回分の勉強会で取り扱っ
た内容のエッセンスを、余すところなくお届けいたします。
───────────────────────────────────
◆多様な財政方式の世界・・・積立方式と賦課方式だけじゃない
財政方式といいますと、とりわけ公的年金における議論では、「賦課方式」
と「積立方式」の2つが良く取りあげられます。両者はしばし対立的な概念と
して紹介されることもあり、まるで世の中にはこの2種類の財政方式しかない
ものと思われがちです。しかし、賦課方式は数多ある財政方式の1つに過ぎま
せんし、積立方式には様々なバリエーションがあります。
参考までに、日本アクチュアリー会刊行の年金数理のテキストでは、以下の
とおり、12種類もの財政方式があることを確認できます。
賦課方式(pay-as-you-go method)
退職時年金現価積立方式(terminal funding method)
単位積立方式(unit credit method)
平準積立方式(level premium method)
・加入年齢方式(entry age normal cost method)
・個人平準保険料方式(individual level premium method)
・到達年齢方式(attained age normal cost method)
・(閉鎖型)総合保険料方式(closed aggregate cost method)
・開放型総合保険料方式(open aggregate cost method)
・開放基金方式(open aggregate normal cost method)
加入時積立方式(initial funding method)
完全積立方式(complete funding method)
つまり、財政方式を語るうえで賦課方式と積立方式しか取りあげないのは、
日本のプロ野球を語るうえで巨人と阪神しか取りあげないようなものですし、
クラシック音楽を語るうえでモーツァルトとベートーヴェンしか取りあげない
のと同じで、じつに一面的であると言わざるをえません。
◆財政方式とは・・・掛金を「いつ出すか」「どう出すか」
さて、財政方式を教科書的に解説すると、「年金制度から支払われる給付を
賄うのに必要な資金の調達方法(計画)」となります。こう書くと何やら難解
かつ高尚なもののように見えますが、考え方は、貯金やローン返済の計画を立
てることとまったく同じです。例えば、10年間で1,000万円貯蓄すると決意した
としましょう。この場合、「毎月何万円ずつ積み立てようか」「給与だけでな
く賞与からも積み立てようか」「定期預金や投資信託など利回りの高い金融商
品も利用しようか」といったことを、大雑把ながらも検討・計画することでし
ょう。年金制度の財政方式も、考え方は上記と同じです。簡潔に言いますと、
財政方式とは、年金給付に備えて、掛金を
・いつ出すか(加入時か、加入期間中か、退職時か、給付時か)
・どう出すか(一括払いか、分割払いか)
の2点に集約されます。
◆「掛金」と「運用収益」のバランス
年金制度における収入は、「掛金」と「利息(運用収益)」の2種類に大別
されます。財政方式の違いは、年金給付に備えて掛金を「いつ出すか」「どう
出すか」の違いであり、これにより、年金制度の総収入に占める「掛金」と
「利息(運用収益)」の割合が変わってきます。
基本的には、支給開始時点よりも早めに掛金を拠出すればするほど、運用収
益を稼ぐ期間を長く見込めるため、掛金総額(元手)は少なくて済みます。一
方、掛金の拠出が支給開始の間際になればなるほど、運用収益を稼ぐ期間が少
なくなるため、掛金総額(元手)は多めとなります。つまり、財政方式を決定
するということは、年金制度の総収入に占める「掛金」と「運用収益」の割合
を決めることに他なりません。
◆財政方式あれこれ
ここでは、代表的な財政方式について解説いたします。
◇賦課方式・・・運用収益をあてにしない
賦課方式と言いますと、「年金給付に必要な原資を、その時の現役世代が賄
う仕組み」であり「世代間扶養」の考え方とともに説明されることが多いです
が、これは一面的な見方でしかありません。
賦課方式とは、給付が発生する都度、当該給付を掛金だけで賄う「ある時払
い」(pay-as-you-go)の仕組みです。掛金だけで給付を賄う、すなわち、運用
収益を当てにしない(=積立金を保有しない)のが賦課方式の本質です。運用
収益をまったく見込まないため、掛金負担はあらゆる財政方式の中で最も大き
くなります。
年金財政における賦課方式とは、積立金を保有しないためインフレ等による
積立金の目減りに強いものの、掛金収入が滞ると直ちに給付に影響するため、
掛金徴収体制が盤石であることが前提となります。そのため、世界各国の公的
年金制度で広く採用されているものの、企業年金制度で賦課方式を採用してい
る例はあまり見られません(仮に導入・採用しても、税制上の優遇措置は得ら
れません)。
まとめると、賦課方式の特徴は、以下のフレーズに集約されます。
「(掛金を)いつ出すの?」「今(給付時)でしょ!」
◇退職時年金現価積立方式・・・退職時にドカンと一括拠出
退職時年金現価積立方式とは、文字どおり「年金給付に要する費用を、退職
時(=受給開始時)に一括で積み立てる」仕組みです。例えるなら、個人年金
保険を一時払い(一括払い)で購入するようなものです。拠出した掛金から生
じる利息分だけ、賦課方式よりも掛金総額は小さくなります。
しかし、この方式では、一時的とはいえ巨額の掛金負担が生じるほか、退職
者の増減によって毎年の掛金拠出額が大きく変動するという欠点があります。
これはまさに退職一時金制度に共通する欠点であり、掛金負担の平準化を導入
目的としている企業年金制度においてこの方式を採用する意義は薄いでしょう。
まとめると、賦課方式の特徴は、以下のフレーズに集約されます。
「(掛金を)いつ出すの?」「退職時でしょ!」
◇完全積立方式
完全積立方式は、「完全積立」という語感が災いしてか、賦課方式の反対概
念として積立方式全般を指す意味で用いる有識者が多いですが、これは大きな
誤りです。
年金財政における完全積立方式とは、事前に積立金を準備しておき、当該積
立金から発生する運用収益だけで給付を賄う方式です。例えるなら、「宝くじ
で一等前後賞が当たれば一生利息だけで食って行ける」という夢想を具現化し
た仕組みであると言えます。給付を運用収益のみで賄い掛金負担は一切あてに
しないという意味では、賦課方式とは対極に位置する財政方式です。
しかし、完全積立方式を実施するためには、運用収益で給付を賄えるだけの
莫大な積立金を用意しなければなりません。例えば、現在のわが国の公的年金
の年間給付総額(約50兆円)を運用収益だけで賄おうとすると、必要な積立金
は以下の通りとなります。しかも、積立金の規模は運用利回りの見込みによっ
て大きく異なっており、資産運用環境の変動が給付に甚大な影響を及ぼすこと
を表しています。
・運用利回り5%の場合:1,000兆円(=50兆円÷0.05)
・運用利回り3%の場合:1,666兆円(=50兆円÷0.03)
・運用利回り1%の場合:5,000兆円(=50兆円÷0.01)
以上の点から、完全積立方式は、資金準備面および資産運用面でのハードル
が非常に高いため、実際に採用される可能性は極めて低いです(仮に導入・採
用しても、税制上の優遇措置は得られません)。
◇平準積立方式・・・実務で使用されている財政方式
平準積立方式とは、加入期間中に定期的かつ平準的に掛金を積み立てるとい
う、私たちが年金制度と聞いてまず連想する仕組みです。厳密には、掛金負担
を平準化する方法等により「加入年齢方式」「総合保険料方式」など、更に複
数の方式に分かれます。
わが国の税制優遇を伴う企業年金制度(確定給付企業年金、厚生年金基金)
では、事前積立かつ平準積立であることが求められており、加入年齢方式を中
心とした平準積立方式を採用することが求められています。
事前積立が求められる理由は、加入期間中に積立金を形成することにより、
在職中の加入者の受給権に対し資金的裏付けを与えるためとされています。ま
た、平準積立が求められる理由は、企業年金の掛金は税制上損金算入が認めら
れており、恣意的な掛金拠出による過大損金算入を防ぐ観点から、適正な年金
数理に基づき算出された平準的な掛金を用いることとされています。
◆まとめ・・・どの財政方式が一番良いのか
以上、財政方式には様々な種類があることを解説しましたが、この手の議論
では「結局、どの財政方式が一番良いのか」という質問がつきものです。結論
から言いますと、どの財政方式を選ぼうとも、給付のための総費用(掛金+運
用収益)は同一です。
例えば、加入期間10年、予定利率3%、期初に年額1を支払う5年確定年金
を想定すると、年金給付総額は5(=1×5)ですが、各財政方式における掛
金総額と運用収益の総額は、以下のとおりとなります。
<掛金> <運用収益> <合計>
・賦課方式 5.000 0.000 5.000
・退職時年金現価積立方式 4.717 0.283 5.000
・加入年齢方式 3.995 1.005 5.000
・完全積立方式 0.000 5.000 5.000
(注)完全積立方式では積立金171.667を事前に準備する必要あり
上記では、財政方式によって掛金と運用収益の割合は異なるものの、掛金と
運用収益の合計はいずれの財政方式においても5となることが確認できます。
つまり、給付建ての年金制度における究極の費用は、掛金ではなく給付(給付
額・支給期間等)なのです。
*執筆者紹介
谷内 陽一 (たにうち よういち)
りそな銀行 信託ビジネス部 りそな企業年金研究所 担当マネージャー
1級DCプランナー、社会保険労務士、証券アナリスト(CMA(R))
■━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…
2〉東京で開催する勉強会の参加者を募集しています。
「大きく変わる確定拠出年金の課題と今後の展望」(再掲)
───────────────────────────────────
3月1日付のメルマガでご案内しましたように東京で勉強会を開催します。
定員にまだ余裕がありますので、参加を希望される方は、お早めにお申し込
みください。
昨年から社会保障審議会において、確定拠出年金を含めた企業年金の今後に
ついて検討が進められています。特に確定拠出年金については、個人型の加入
対象者の適用拡大をはじめとした、大きな改正が予定されています。
本勉強会では、社会保障審議会で論議された内容についての解説をはじめ、
今後の制度改定の展望や業界動向も交えてわかりやすく解説します。
◆日 時:2015年3月26日(木)18:30~20:30(受付18:00~)
◆会 費:3,500円(会場にて申し受けます)
◆講 師:佐藤 政洋
東京海上日動火災保険株式会社 401k事業推進部次長
日本証券アナリスト協会検定会員
日本アクチュアリー会準会員
1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
◆会 場:港区虎ノ門
◆定 員:40名(先着順)
◆幹 事:企業実務研究会 企業年金部会
◆申込先:参加を希望される場合は、下記のURLからお願いします。
http://www.benkyou-j.com/study/detail.php?sid=190
■━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…
【日本商工会議所からのお知らせ】
3〉商工会議所年金教育センターのホームページ閉鎖のご案内
───────────────────────────────────
皆様にご利用いただいてきました、商工会議所年金教育センターのホーム
ページにつきましては、平成26年12月末を持って閉鎖いたしました。
なお、本メールマガジンのバックナンバー、1級試験対策の答案練習シリー
ズ、企業年金に関する勉強会情報等につきましては、日本商工会議所の検定
ホームページ内(DCプランナーコーナー)に順次移行予定ですが、移行終了
までの期間、閲覧が出来なくなりますのでご了承ください。
詳細につきましては、決まり次第、改めて本メールマガジン等でご案内いた
します。
■━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…
4〉DCプランナー資格登録者の住所変更等手続きについて
───────────────────────────────────
DCプランナー資格登録者で、住所や勤務先、メールアドレス等を変更した
場合は、お手数ではございますが以下の連絡先まで、メールかFAXにて、
ご連絡いただきますようお願いいたします。
『住所等変更通知(申請書)』は商工会議所検定ホームページ内、DCプラン
ナーページ(http://www.kentei.ne.jp/planner/)に掲載しておりますので、
住所変更等をご連絡いただきます際にご利用ください。
なお、FAXにてご連絡いただく場合は、併せて受信確認の電話をお願い
いたします。
変更のご連絡がない場合、メールマガジンや情報誌、資格更新のご案内
などに関する連絡文書等が届かなくなりますので、必ず手続きをお願いいた
します。
※このメールは送信専用のメールアドレスから配信されています。
住所変更等のご連絡につきましては、必ず以下の連絡先にお願いいたし
ます。
≪手続き・ご連絡先:検定支援センター≫
FAX:03-3402-7966
TEL:03-3402-2109
E-Mail:kentei@msa.biglobe.ne.jp
◆◆━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━…━◆◆
次号(第297号)は、4月1日(水)に送信予定です。
───────────────────────────────────
【企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン】
編集・発行:日本商工会議所 商工会議所年金教育センター
───────────────────────────────────
このメールマガジンの内容に関するご意見・ご感想は、編集部までお寄せく
ださい。
E-Mail:nenkin@jcci.or.jp
───────────────────────────────────
《禁・無断転載》
このメールマガジンの著作権は、上記の発行者に帰属します。
───────────────────────────────────