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》》企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン《《

第298号(2015.4.15)
日本商工会議所
商工会議所年金教育センター

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         〉〉〉CONTENTS〈〈〈
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【連載記事】
1〉「今さら人には聞けない 年金財政・年金数理『超』入門」(全3回)」
第3回 財政決算・財政検証が分かれば年金財政がわかる
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【勉強会の開催情報】
2〉大阪で開催する勉強会のご案内 ≪予告≫
「【大阪開催】ホンネで語り合う企業年金事情 2015春期」
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【日本商工会議所からのお知らせ】
3〉商工会議所検定情報サイト内にDCプランナー向けのコーナーを開設
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4〉DCプランナー資格登録者の住所変更等手続きについて
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このメールマガジンは、企業年金総合プランナー(DCプランナー)認定試
験に合格し、1級または2級の資格を登録された方々に対する情報提供サービ
スの一環として、原則、毎月2回(1日および15日)送信しています。
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1〉「今さら人には聞けない 年金財政・年金数理『超』入門」(全3回)」
第3回 財政決算・財政検証が分かれば年金財政がわかる

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2014年7月および2015年1月に開催され大好評を博した「今さら人には聞け
ない 年金財政・年金数理」勉強会。今回は、過去2回分の勉強会で取り扱っ
た内容のエッセンスを、余すところなくお届けいたします。
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◆年金財政運営とは・・・計画どおりに行かない場合に備える
企業年金の財政運営は、設立時に基礎率を設定し、収支相等の原則が成り立
つように適切な掛金を設定することから始まります。しかし現実には、資産運
用環境の悪化により運用収益が少なくなったり、希望退職を募ったため退職者
が急増したり、どんなに万全を期して基礎率を設定したとしても、実際の年金
財政運営が予定どおり(基礎率どおり)に推移することはまずありません。こ
のような事態が生じたにもかかわらず、予測と実績との乖離を放置(=掛金水
準を変えずに放置)していると、将来にわたって約束した給付を行うことがで
きなくなる可能性が高くなります。

そこで、給付建ての企業年金制度では、その時々の状況に応じて、掛金を適
切に見直すためのしくみが組み込まれています。具体的には、年金制度が計画
どおりに推移しているかをチェックし、そのチェックの結果、「計画から大き
く外れている」または「外れそうである」と判断された場合には、計画の立て
直し(掛金の見直し)を行うことになっています。これらチェック機能として、
「財政決算」「財政検証」「財政再計算」があります(本稿では、「財政決算」
および「財政検証」の2つを取扱います)。

◆財政決算・・・企業会計との違いに注意
財政決算では、決算期中の収入・支出を記録した損益計算書(P/L)およ
び決算期末時点の資産・負債の状況を記録した貸借対照表(B/S)を作成す
るとともに、期中に発生した損益(剰余金・不足金)の状況および発生要因を
分析し、その動向を把握することを目的としています。と、ここまでは一般的
な企業会計と何ら違いは無いのですが、企業会計と年金財政決算とではその目
的が大きく異なる点に留意が必要です。

企業の存在意義は、言うまでもなく利益(=収入-支出)を生み出すことに
あります。企業の損益計算書では、収益欄に収入が、費用欄に支出がそれぞれ
計上され、企業が利益を拡大するために「収益(収入)をどう増やしたか」ま
たは「コスト(費用)をどう減らしたか」が記録されています。

これに対し、企業年金の損益計算書では、収益欄に「掛金」および「運用収益」
が、費用欄に「給付」が計上されます。しかし、年金財政決算の目的は「給付
を行うための資金調達が順調かどうか」を把握することにあるため、「収入
(掛金・運用収益)-支出(給付)がいくら残ったか」ではなく、「給付をど
うやって賄ったか(掛金か? 運用収益か? あるいはその両方か?)」を見な
ければなりません。

年金財政を巡る議論で、「掛金収入よりも給付費が多いと年金財政が悪化す
る」という言説が良く用いられますが、これは、企業会計の考え方と年金財政
決算の考え方を混同しています。企業会計の考え方に照らすと、「資産を溜め
込む制度ほど良い制度」とされてしまいますが、企業年金の目的は「給付を履
行すること」であり、年金資産は給付に充てるための運用収益を稼ぐ手段に過
ぎません。年金資産はいずれ加入者に給付として返還するいわば「預り金」で
あることを考慮すると、「借金(掛金)よりも返済(給付)が多いと家計が悪
化する」という言説がいかに的外れであるかは容易に察しがつくことでしょう。

◆財政検証・・・財政決算とは異なる尺度で
わが国の確定給付企業年金制度および厚生年金基金制度では、毎年の財政決
算において剰余金・不足金の状況を把握するとともに、当該剰余金・不足金の
水準が今後の年金財政運営に支障を来たさないかを検証することとされていま
す。財政検証には、「継続基準の財政検証」、「非継続基準の財政検証」、
「積立上限額に係る財政検証」の3つがあります(本稿では、「継続基準の財
政検証」および「非継続基準の財政検証」の2つを取扱います)。

例えるならば、財政決算が「身長・体重測定」であるのに対し、継続基準お
よび非継続基準の財政検証は血液検査や胃カメラ等を用いる「成人病検診」、
積立上限額に係る財政検証は食事制限等の「メタボリック検診」に相当すると
いえます。

◇継続基準・・・今後も掛金収入があることを前提に検証
継続基準の財政検証では、「年金給付」のための「積立が予定どおり進んで
いるか」を検証します。ここでいう「年金給付」とは「支給開始年齢に到達し
た受給者全員が年金受給すること(一時金の受給は0%)」を、「積立が予定
どおり進んでいるか」とは「今後も掛金収入があること」をそれぞれ意味しま
す。

継続基準の財政検証では、責任準備金以上の年金資産(純資産額)を保有す
ること、すなわち不足金がない状態で財政運営を行うよう努めなければならず、
責任準備金を下回った場合は、当該不足分を穴埋めすること等が求められます。
しかし、不足金が生じる都度、掛金の引上げを行うとなると安定的に事業運営
ができなくなるほか、不足金は一時的なもので掛金を引き上げなくても解消す
るかもしれません。このため、当分の間、不足金の額が一定(許容繰越不足金)
の範囲内であれば、掛金の見直しを留保することも可能とされています。

◇非継続基準・・・掛金収入は考慮せずに検証
非継続基準の財政検証では、「制度終了時までの約束した給付」を賄うため
の積立があるかどうかを検証します。ここでいう「制度終了時までの約束した
給付」とは、「計算基準日までの過去の加入期間に応じて既に発生していると
みなされる給付額(最低保全給付)」であり、給付の種類(年金か一時金か)
や金額が個々の加入者等によって異なり、その点も加味し、計算します。

非継続基準の財政検証では、最低積立基準額以上の年金資産(純資産額)を
保有すること等が求められます。最低積立基準額は、前述の最低保全給付を保
守的な利率(30年国債等を基準)で割引計算して求めますが、基準日以降の掛
金収入は考慮しないこと等から、一般的には、継続基準よりも基準クリアのた
めのハードルは高くなる傾向にあります。

◆継続基準と非継続基準の比較・・・それぞれ役割が異なる
継続基準の財政検証と非継続基準の財政検証とを比較すると、継続基準は、
今後も掛金収入を見込むことから財政方式によって債務の数値が異なります。
一方、非継続基準は、掛金収入を考慮しないことから、同じ給付設計であれば
財政方式の違いを問わず最低積立基準額の数値は同一となります。

なお、継続基準と非継続基準については、「なぜ似たような基準が2つもあ
るのか」「継続基準は基準をわざと甘くしているのではないか」と批判される
こともあります。しかし、前述のとおり継続基準と非継続基準は前提となる考
え方や役割がそれぞれ異なるため、こうした批判は適切ではありません。例え
るなら野球では打者の成績を計る指標として「打率」 「出塁率」 「打点」 「安打数」
など様々な指標があるにもかかわらず、「本塁打数」だけで打者の優劣を判断
せよと主張するようなものです。
*執筆者紹介
谷内 陽一 (たにうち よういち)
りそな銀行 りそな年金研究所 担当マネージャー
1級DCプランナー、社会保険労務士、証券アナリスト(CMA(R))
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2〉大阪で開催する勉強会のご案内 ≪予告≫
「【大阪開催】ホンネで語り合う企業年金事情 2015春期」
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下記のとおり大阪で勉強会を開催します。5月1日号のメールマガジンから
募集を開始いたします。
厚生年金基金、確定給付企業年金、確定拠出年金等、各企業年金の動向や現
場の動き、実際の改革事例、退職給付会計の動向、基金やDBの資産運用動向、
DC投資教育の動向、諸外国の年金動向など幅広い内容をもとに、年金基金の
担当の方、企業の人事・労務担当の方、財務部門の方、事業主の方、運用機関
の方、コンサルタント等、それぞれの立場から自由に意見を語り合える場にも
してまいります。企業年金にご関心のある方のご参加をお待ちしております。
◆日 時:平成27年6月7日(日)15:00~17:00 (受付開始14:45)

◆会 費:3,500円(お支払方法は、お申込み完了後にお知らせいたします)

◆講  師:企業実務研究会大阪支部 登録講師
1級企業年金総合プランナー(DCプランナー)

◆会 場:追手門学院大阪城スクエア 6階 大手前ホールB
大阪市中央区大手前1-3-20
(追手門学院大手前中・高等学校本館6階)
会場へのアクセス
http://www.otemon-osakajo.jp/outline/index.html

◆定 員:20名(先着順)

◆幹 事:企業実務研究会 大阪支部

◆申込先:5月1日号メールマガジンにて、申込URLをお知らせいたします。
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【日本商工会議所からのお知らせ】
3〉商工会議所検定情報サイト内にDCプランナー向けのコーナーを開設
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商工会議所検定情報サイトのDCプランナー(企業年金総合プランナー)
ページ内に、DCプランナー向けメニューを開設しました。
コーナーには、本メールマガジンのバックナンバーや、企業年金に関する
勉強会情報などの情報を掲載しており、今後は、内容の充実を図っていく
予定ですので、是非ご活用ください。

〇検定情報サイト・DCプランナー向けコーナー
http://www.kentei.ne.jp/dcp
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4〉DCプランナー資格登録者の住所変更等手続きについて
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DCプランナー資格登録者で、住所や勤務先、メールアドレス等を変更した
場合は、お手数ではございますが上記の検定情報サイト内、DCプランナー
向けコーナーの『登録情報変更連絡フォーム』からご連絡いただきますよう
お願いいたします。
住所変更をされていない場合、資格更新に関する案内文書などの郵送物が
届かなくなりますので、ご注意ください。

〇登録情報変更連絡フォーム
http://www.kentei.ne.jp/dcp/contact
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次号(第299号)は、5月1日(金)に送信予定です。
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【企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン】

編集・発行:日本商工会議所 商工会議所年金教育センター

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お寄せください。
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