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》》企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン《《

第304号(2015.7.15)
日本商工会議所
商工会議所年金教育センター

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                             〉〉〉CONTENTS〈〈〈
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【連載記事】
1〉「2015年度の年金法の改正事項」(全3回)
第1回 マクロ経済スライドがついに適用開始
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2〉1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)認定試験
答案練習(全8回)
2015年度試験対策 [第3回] A分野:わが国の年金制度
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【勉強会の開催情報】
3〉東京で開催する勉強会の参加者を募集しています。
「マクロ経済スライドの適用に影響される老後生活の変化と
企業年金の充実」(再掲)
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【日本商工会議所からのお知らせ】
4〉DCプランナー資格登録者の住所変更等手続きについて
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このメールマガジンは、企業年金総合プランナー(DCプランナー)認定試
験に合格し、1級または2級の資格を登録された方々に対する情報提供サービ
スの一環として、原則、毎月2回(1日および15日)送信しています。
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1〉「2015年度の年金法の改正事項」(全3回)
第1回 マクロ経済スライドがついに適用開始  松村正明
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2015年度は、年金制度に大きく影響する「マクロ経済スライドの適用開始」、
「被用者年金の一元化」、「マイナンバー制度の導入」と多くの改正事項があ
ります。第1回として、4月から適用が開始された「マクロ経済スライド」に
ついて説明します。

1.2015年度の年金額は、0.9%引上げ
公的年金は、年金の実質価値を維持するために、物価スライドが適用されて
います。2014年の消費者物価が消費税の引上げ等の影響で2.7%上がり、実に16
年ぶりに年金額が0.9%上がりました。しかし、昨年の物価上昇率は2.7%でした
ので、年金の実質価値は、1.8%下がったことになります。なぜ、このようなこ
とになったのでしょうか?

<理由1>年金額の改定のルールで賃金変動率2.3%が適用された
公的年金は、物価や賃金の変動にあわせて毎年改定されます。
年金額の改定のしくみは、下記のとおりです。
○ 新規裁定者(67歳以下) 賃金変動率
○ 既裁定者 (68歳以上) 購買力を維持する観点から物価変動率
(賃金変動率<物価変動率の場合は、賃金変動率を適用)

※2015年度の賃金変動率
=物価変動率(1.027)×実質賃金変動率(0.998)
×可処分手取り賃金変動率(0.998)≒(およそ)1.023

2015年度は、賃金変動率(2.3%)<物価変動率(2.7%)のため新規裁定者、
既裁定者とも賃金変動率(2.3%)で改定されました。

<理由2>特例水準の解消で▲0.5%調整された
2000年度から2002年度にかけて、物価が下落したにもかかわらず、特例法
で年金額を据え置いたため、本来の年金額(本来水準)よりも2.5%高い水準
の年金(特例水準)が支払われていました。高い水準の年金額を払い続けるこ
とは、年金財政を悪化させますので、2012年の法改正で、2013年10月▲1.0%、
2014年4月▲1.0%、2015年4月▲0.5を%引き下げて、2015年4月に解消しま
した。

<理由3>マクロ経済スライドの適用開始で、▲0.9%調整された
マクロ経済スライドとは、賃金や物価の改定率をスライド調整率(公的年
金被保険者数の変動率と平均余命の伸び率)で抑制して穏やかに給付水準を
引き下げる仕組みです。
マクロ経済スライドは、2004年の年金法改正で導入されましたが、特例水
準が解消後に開始され、デフレの経済状況では適用しないことになっていま
した。デフレの経済状況が続いたため、特例水準が解消されず、実に12年間
マクロ経済スライドは実施されませんでした。
しかし、特例水準が解消されたことと消費税の引上げにより、賃金変動率
が2.3%になったことにより初めて適用されました。

※2015年度のスライド調整率
=公的年金被保険者数の変動率0.6%(0.994)×平均余命の伸び率(0.997)
≒(およそ)0.991(▲0.9%)

2015年度の年金は、賃金変動率(+2.3%)、特例水準の解消(▲0.5%)、スラ
イド調整率(▲0.9%)が控除され、改定率は0.9%になりました。特例水準が解
消されたことにより、今後は本来水準の計算方法で年金額が改定されます。

※2015年度の特例水準の改定率
=賃金変動率(1.023)×特例水準の解消(0.995)
×スライド調整率(0.991)=1.009(+0.9%)

2015年度の本来水準の改定率
=賃金変動率(1.023)×スライド調整率(0.991)=1.014(+1.4%)

2.マクロ経済スライドは、いつまで行う
急速な少子高齢化に伴い、年金額の伸びに応じて保険料を引き上げ続けるこ
とは、現役世代の保険料負担が際限なく増大することになります。そのため、
2004年の改正において、2016年9月以降は厚生年金保険料を18.3%に、2017年4月
以降は国民年金保険料を16,900円に固定する「保険料水準固定方式」を採用し
ました。
それに伴い、年金財政を長期的に安定させるため、保険料等の収入の範囲内
で年金給付を賄うしくみとして、年金額をおおむね100年後に、年金給付費の1
年分の積立金を保有することができるように、一定期間物価や賃金の上昇より
も抑制して、穏やかに給付水準を引き下げるマクロ経済スライドを導入しまし
た。
マクロ経済スライドは、所得代替率が50%になるまで、調整し続けます。

※所得代替率(標準モデル世帯の年金額/現役男性の賞与込みの手取り収入)

昨年の財政検証では高成長から低成長までの8ケースが示され、そのうちの
中間的なケースでは、約30年間調整されます。

2015年度の所得代替率
=標準モデル世帯の年金額/現役男性の賞与込みの手取り収入
=218,000円/348,000円=62,7%

2043年度の所得代替率
=標準モデル世帯の年金額/現役男性の賞与込みの手取り収入
=242,000円/482,000円=50.6%

3.マクロ経済スライドへの対応
マクロ経済スライドは、物価が仮に2%上がってもスライド調整率で調整され、
年金は1%程度しか上がりません。年金の実質価値は、毎年目減りします。
年金受給者の方には、厳しい時代となります。減額される年金収入に見合っ
た生活をすることが求められます。
現役世帯の方は、公的年金の給付水準が標準的モデル世帯における所得代替
率の50%(2割以上)まで引き下げられますので、老後資金の確保が必要となり
ます。

老後資金の確保の対応方法としては、以下の対応等が考えられます。

(1) 自分の公的年金を増やす
→厚生年金の被保険者として、定年退職後もできるだけ長く働く

(2) 世帯の年金額を増やす
→2016年10月からの短時間労働者の適用拡大が実施されますので、
国民年金の第3号被保険者の方は厚生年金の被保険者として働く

(3) 自助努力で老後資金を蓄える
→今法案が提出されている個人型DC(誰もが加入者となれる制度)
および個人年金保険等を活用して老後資金を確保する

悔いのない人生を送るためには、自分の老後生活は、自分で守ることが必要
です。

*執筆者紹介
松村 正明 みずほ信託銀行 年金管理部 調査役
特定社会保険労務士、1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)、
1級FP技能士、CFP

※ 本稿における意見は筆者個人に属するものであり、筆者が所属する会社の
見解を示すものではありません。

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2〉1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)認定試験
答案練習(全8回)
2015年度試験対策 [第3回] A分野:わが国の年金制度
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【問題】(2015年1月出題)

次の各問(《問1》~《問2》)に答えなさい。

《問1》 国民年金基金の加入員と給付に関する次の記述のうち、不適切なも
のはどれか

1) 国民年金基金には、日本国内に住所を有する60歳以上65歳未満の国民年
金の任意加入被保険者も加入できる。
2) 国民年金基金は、加入員が必ず加入する「1口目」の終身年金と、任意
で加入する「2口目以降」の年金がある。
3) 国民年金基金2口目以降の年金の選択にあたっては、確定年金のA型、
B型のほか、終身年金のⅠ型、Ⅱ型、Ⅲ型、Ⅳ型、Ⅴ型のなかから選択す
る。
4) 国民年金基金の1口目の終身年金は65歳になると支給が開始され、死亡
するまで終身支給される。

《問2》 平成26年4月1日施行の厚生年金基金に係る制度改正に関する次の
記述のうち、不適切なものはどれか。

1) 平成26年4月1日以後、厚生年金基金の新設は原則として認められない。
2) 平成26年4月1日から5年間の時限措置として特例解散制度を見直し、
分割納付における事業所間の連帯債務を外すなど、基金の解散時に国に納
付する最低責任準備金の納付期限や納付方法の特例が設けられている。
3) 平成26年4月1日から3年後以降は、代行資産保全の観点から設定した
基準を満たさない基金については、厚生労働大臣が第三者委員会の意見を
聴いて、解散命令を発動することができる。
4) 上乗せ給付の受給権保全を支援するため、厚生年金基金から他の企業年
金等への積立金の移行について特例が設けられている。

※ 本練習問題の解答・解説については、資格登録者のみに公開しています。

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3〉東京で開催する勉強会の参加者を募集しています。
「マクロ経済スライドの適用に影響される老後生活の変化と
企業年金の充実」(再掲)
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7月1日付のメールマガジンでご案内しましたように、東京で勉強会を開催
します。定員にまだ余裕がありますので、参加を希望される方は、お早めにお
申し込みください。

今まで国の年金は、物価や賃金にスライドして年金額が改定されてきました
が、今年からマクロ経済スライドが適用されることになりました。マクロ経済
スライドは、国の年金制度を将来に渡り持続可能な制度とするために取られる
措置です。将来における年金支給が、100年保たれる水準までスライド率を調整
する仕組みで、現役世代の保険料負担を軽減しようとするものです。

マクロ経済スライドでは、物価や賃金スライド率から、年間約0.9%前後調整
するもので、約30年後の国の年金額は、約20%給付が削減される見込みです。
現在価値で計算すると、65歳から90歳まで年金を受け取る場合は、モデル年
金額では、66百万円が53百万円となり、約13百万円ほど減額され、老後の生活
に重大な影響を及ぼします。現役時代から、自らの老後生活費をどのように、
どの位の額を準備するべきか、企業年金の充実も含めて解説します。

◆日 時:平成27年7月28日(火)18:30~20:30(受付18:00~)

◆会 費:3,500円(会場にて申し受けます)

◆講 師:田坂 康夫
1級DCプランナー(企業年金総合プランナー)
社会保険労務士・CFP
日本年金学会幹事
LLPグローバル・マインド顧問

◆会 場:港区虎ノ門 第1オカモトヤビル 第一会議室
http://www.okamotoya.com/rental/rentalroom4.html

◆定 員:40名(先着順)

◆お申し込み方法:
Eメールにて、タイトルに「7月28日勉強会参加希望」と
ご入力頂き、お名前、所属、領収書の宛名が異なる場合は
その名称をご記入のうえ、以下のアドレス宛てにお送り
ください。
admin@globalmind.co.jp

◆幹 事:みなとグローバル研究会 虎ノ門勉強会(旧 企業実務研究会)
事務局 大高 直美

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【日本商工会議所からのお知らせ】
4〉DCプランナー資格登録者の住所変更等手続きについて
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DCプランナー資格登録者で、住所や勤務先、メールアドレス等を変更した
場合は、お手数ではございますが下記の検定情報サイト内、DCプランナー
向けコーナーの『登録情報変更連絡フォーム』からご連絡いただきますよう
お願いいたします。
住所変更をされていない場合、資格更新に関する案内文書などの郵送物が
届かなくなりますので、ご注意ください。

〇登録情報変更連絡フォーム
http://www.kentei.ne.jp/dcp/contact
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次号(第305号)は、8月1日(土)に送信予定です。
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【企業年金総合プランナー(DCプランナー)メールマガジン】

編集・発行:日本商工会議所 商工会議所年金教育センター

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