日商簿記の知識は一生の武器。磨きをかけることで人生が開けます。
(公認会計士 松田 流輝さん)
簿記資格を生かして、活躍する社会人の方を紹介する本コーナー。
今回は、公認会計士の松田 流輝さんにお話を伺いました。
松田さんは、公認会計士であると同時に、高崎商科大学講師、同大学経理研究所の客員研究員としての顔も持ち、さらには一般社団法人日本商業教育振興会の指導担当として、全国の商業高校等の生徒を対象に日商簿記検定試験1級・2級の学習を支援されています。
-日商簿記の勉強を始められたきっかけを教えてください。。
群馬県立伊勢崎商業高校に入学し、簿記と出会ったことがきっかけでした。商業高校進学の決め手は、母子家庭だったこともあり、親に心配をかけたくない・お金の面で負担をかけたくないとの思いから、家から近く自転車で通えること、塾に通う必要がなく学力的にも無理がないこと、そして高校卒業後に就職に有利であると考えたためです。
当初は、簿記の存在は全く知らなかったのですが、1年生で全商簿記の学習をしたところ、とても楽しかったので、2年生への進級時には日商簿記2級取得に挑戦する会計科を選択しました。その時は、将来母に経済的に楽をさせたいという思いから、きちんと高い収入を得られそうな公認会計士を目指し、そのためにはまず日商簿記の勉強をしようと考えていました。その後、2年生の11月に第132回の日商簿記2級を受験し、合格しました。
-日商簿記の勉強はどのように行っておられたのでしょうか。勉強で苦労されたことはありますか。
日商簿記2級は高校の授業で教えてもらうことができました。1級については、先生が「高崎商科大学が高校と大学の連携事業であるHaul-Aプロジェクトを始動させるところで、その中の企画である「日商簿記1級プロジェクト」に参加できれば1級の学習ができる」と紹介してくださいました。
そこで、高崎商科大学に行き、出会ったのが、小島一富士先生でした。2級の点数を伝え、漠然と「公認会計士になりたい」と伝えたら、「3年生11月に日商簿記1級合格、大学1年生8月に簿財合格、12月に会計士短答式に合格、大学2年生8月に会計士論文式に合格で、君は会計士だ」と迷いなく言い切ってくださったことは今でも覚えていて、最後に交わした握手も力強かったことを覚えています。この時、小島先生を信じてやっていけば、合格できると思いました。その日に1級の教材の一部を受け取り、残りは高校の先生にお願いして印刷してもらいました。
「日商簿記1級プロジェクト」の学習は、Web講義を受講しながら、答案練習を毎日実施して点数報告を行うというものでした。しかし、当時の自分はパソコンやスマートフォンを持っていなかったため、(Web講義は受講せず)愚直に何度もテキストを読み込むことで学習を行っていました。3年生の時に母親を亡くし、陸上部をやめて放課後はバイトをしていたこともあり、学校のパソコン教室でWeb講義を受講する時間を確保するのも難しい状況でした。
厳しい学習環境ではありましたが、3年生の11月、第135回の日商簿記1級を取得することができました。
-その後、見事、公認会計士になられました。会計士の仕事の魅力は何でしょうか。
仕事の幅が2つの意味で広いことです。
1つ目は、活躍するフィールドが様々に存在すること。
監査法人、企業内会計士、地方自治体、国(金融庁・会計検査院)、警察(財務捜査官)、税理士、大学等での指導者など、様々な場所、立場で活躍できます。
2つ目は、関与できる業種に制限がないこと。
公認会計士としての様々な側面を活かせば、自分の趣味や関心事を支えている企業に関われる可能性があること。ゲーム制作会社、アニメ制作会社、マンガ書籍制作の出版社、グッズ制作会社等、様々な業種の企業の業務に関わることができます。
-日本商業教育振興会 の指導担当として、高校生に日商簿記の指導もされています。指導の魅力はどういったところでしょうか。
自分が教えていることが他人の役に立っているのか、問題を解く時間にあててもらった方がその子のためになるんじゃないかと、常に不安と戦っています。その中で、「わかった」と言ってもらえたり、「合格しました」と言ってもらえたりすることが原動力であり、魅力だと感じています。
--簿記資格の取得を目指している方へ、メッセージをお願いします。
私は日商簿記検定をきっかけに人生が大きく動きました。自分には何ができるのだろう、どんな知識を武器に社会で生きていけばいいのだろうと立ち止まって考えることもありました。そんな時に真っ先に浮かんだのが、簿記の知識です。公認会計士の短答式試験まで合格していましたが、日商簿記の資格を有していることも、一歩を踏み出すきっかけとしては十分だったのではないかと考えています。簿記は一生の武器になりますし、磨けば磨くほど道が開けていくと感じていました。日商簿記の学習を行い、簿記の知識を武器に企業を救える人財を目指してください。
Profile
松田 流輝 Ryuki Matsuda
1995年群馬県生まれ。高崎商科大学中退後、21歳の時に公認会計士試験(論文式)に合格。監査法人トーマツ勤務を経て、現在は、高崎商科大学 講師、同大学 経理研究所 客員研究員を務めながら、一般社団法人 日本商業教育振興会 指導担当として、日商簿記・公認会計士試験の学習支援に携わっている。