簿記が分からなければ経営は絶対にできないと思います。
(袋井商工会議所会頭 豊田浩子さん)
簿記資格を生かして、活躍する社会人の方を紹介する本コーナー。
今回は、袋井商工会議所会頭・丸尾興商株式会社代表専務取締役経理部長の豊田浩子さんにお話を伺いました。趣味は着物とのことで、春らしい桜柄の着物で取材に応じていただきました。
-日商簿記1級を取得されているとのこと、取得されたきっかけは何でしょうか。
家業の丸尾興商株式会社は父が創業した会社で、管工機材、住宅設備機器、機械工具、建材などを扱う総合卸売商社です。父が病に倒れ他界した後、上司であった経理部長が、簿記の基礎を学ぶ必要があると勧めてくれました。3級から受験しましたが、経理をやっていたこともあり、あまり勉強しなくても2級まではほぼ満点で合格することが出来ました。
しかし、1級は一気に難易度が高くなり、合格するために必死で勉強しました。仕事と子育てを両立しながらの勉強でしたので、家族が寝静まった後と、朝起きてくる前までの間しか自分の時間がなく、睡眠時間を削って勉強しました。冬は寝ている子供の横で、スタンドライトの明かりだけを頼りに布団をかぶりながら勉強することもありました。そのような日々で、平日の夜は2時間、朝は1時間ほど勉強時間を確保し、休日はまとまった時間を確保していました。また、資格学校も活用しました。仕事が終わってから、家族の食事の支度をしてから通いました。模試で6%以内に入った時自信をもって試験に臨む事が出来ました。
-仕事と子育てを両立しながらの勉強ですが、工夫されたことはありますか。
1級は非常に難しいと感じていたので、気分転換として、試験までの間に比較的難易度の低い、かつ社業に関係する他の資格試験を受験するようにしていました。他の資格試験に合格することで、日商簿記の学習へのモチベーションを維持することができました。この方法は現在資格取得に向けて学習に取り組んでいる娘にも勧めています。
1級の学習は大変でしたが、簿記は学べば学ぶほど理解が深まるものですし、簿記が分かると自社のことやお客様である製造業のことが分かるようになるので、楽しみながら勉強することができました。当時の上司であった経理部長は経理に精通した方でしたが、日商簿記の勉強をすればするほど、上司の話していることが理解できるようになっている感覚もあり楽しかったです。勉強の成果もあり、日商簿記の学習を始めてから約2年で1級に合格することができました。
-経営者の目線で、日商簿記の資格を取得するメリットは何でしょうか。
簿記が分からなければ経営は絶対にできないと思っているので、最低でも日商簿記3級は取得していたほうがいいと思います。商業高校の出身などですでに簿記を学んでいる経営者の方はまだしも、簿記を学んだことのない方には、ぜひ勉強することをお勧めます。
会社にいると自社の経理しか分からないものですが、簿記の学習を通じて全体を俯瞰する視点を養うことができますし、税理士や取引先の方と話す際、スムーズに会話ができるのは簿記の知識があるからだと思います。
また、簿記の知識を持っていないと、他者の意見を鵜のみにしてしまうリスクがあると思います。自分の会社にとって損か得かを判断するときに、相手に悪意はなくとも結果的に損をしてしまうかもしれません。したがって日商簿記の学習は経営者には必須だと思います
-日商簿記資格の取得を目指している方へ、メッセージをお願いします。
簿記は経営の羅針盤であり、財務戦略の立案に不可欠な知識です。簿記を習得することで、経営状況を的確に把握し、合理的な意思決定を行うことができます。ぜひ日商簿記検定に挑戦し、経営に役立つ会計スキルを身につけていただきたいと思います。
見識を広げるために勉強することは素晴らしい行為です。しかし、せっかく勉強するのであれば、その成果を形として残したいですよね。資格は、その成果の証となります。私自身、会社に必要な資格は率先して、どうせなら、最上位の資格をと思い取得してきました。ぜひ上を目指してほしいですね。
Profile
豊田 浩子 Toyoda Hiroko
静岡県生まれ。袋井商工会議所(静岡県)会頭。丸尾興商株式会社代表専務取締役経理部長、2022年袋井商工会議所会頭就任。
日商簿記1級をはじめ、1級管工事施工管理技士、1級建築施工管理技士、1級土木施工管理技士、1級電気工事施工管理技士、一般毒物劇物取扱者、耐震技術認定者、宅地建物取引士、損害保険プランナーなど、このほか多数の資格を保有。
趣味は着物。